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    クラクラ小説1『チーフのいない夜』

    • 2016.07.04 Monday
    • 04:14

     ぼんやりと眺めているだけでも流星が視界に入りそうな満天の星空。チーフが居ない夜の村は静寂に包まれている。年中火が灯っているたいまつを除けば、深淵の闇がこちらを覗くだろう。

     夜は平和をもたらす。敵が村に入ってくることもなければ、出征することもない。身軽なゴブリンはスキップしている始末だ。心なしか、昼に見かけるゴブリンよりも表情が輝いて見える。陽気にステップを踏みながら村を駆け回るゴブリンは、うたた寝をしているジャイアントの腰に刺さっている白い財布を抜いていた。

     火が消えているアーミーキャンプでは巨躯を誇るドラゴンが体を寄せ合って寝ている。睡眠中ですら緊張感を漂わせているドラゴンの強大さは推して知るべしと言う他ない。

















     普段は兵舎の中で休暇を楽しんでいる兵士も、夜では皆外の空気を味わっている。P.E.K.K.Aの鎧を脱いだバルキリー達が訓練していたり、アーチャーがバーバリアンに弓術を教えていたりとそれぞれが安全な時間を楽しんでいた。

















    「矢は一度に二本も持たないで! 必ず仕留める覚悟を持つのよ!」

















     凛とした表情で弓の使い方を教鞭を振るっているアーチャー。鮮やかな桃色の髪の毛も、暗い世界では栗色に見える。ブラウンベージュの髪を揺らしているアーチャーは自ら弓を持って手本を示そうとしていた。

















    「俺に弓矢は合わねえ! 男なら剣で戦うんだ!」

















     弓を取り上げられたバーバリアンは、興味を無くしたように弓を持つアーチャーから視線を逸らして自分の剣を強く握り締めた。指の形で薄く柄が削れた剣は持ち主が歴戦の戦士であることを想像させる。銀色の剣先は傷がいくつも付いていた。

















    「剣で戦うのは時代が古いのよ。蛮人!」

















     アーチャーは的に向かって引いていた弓を持ち直し、バーバリアンの喉元に射線を合わせて叫んだ。目には怒りの色が浮かんでいる。バーバリアンの矜持はアーチャーの琴線に触れたようだ。

















    「謝るなら今のうちだぞ、貧弱な女め!」

















     振り注ぐ矢に対して的確に剣を合わせ、バーバリアンは距離を徐々に埋めていく。躱した矢の一つが、季節外れなクリスマスツリーの根本に深く突き刺さっていた。周りに置いてあるクリスマスプレゼントが涙を流しているように見える。







     見世物が始まった、と酒を握った観衆が騒ぎ始めた。ウィザードは得意の魔術で燗酒を作って配布している。壁に腰掛けているヒーラー達は金色のゴールドを賭けているようだ。

















    「バ、バーバリアンが勝つれしょ! 守ってくれそうな筋肉が素敵なのれす。」

    「アーチャーの横顔ぺろぺろしたいわぁ。アーチャー可愛いよぉ。」

















     早くも酔いが回ってきたヒーラー達は舌が回らなくなっている。白い羽根を揺らしている姿は蝶々のようだ。酒場と化した壁上を横目に、ウィザードは草むらに座って酒を呷っていた。燗酒から漂うロマンチックで甘い香りは、周囲の気分をより高めさせていた。









    「あの可憐なアーチャーと同一人物とは思えんなぁ。」









     ウォールブレイカーは手のひらで爆弾を転がしながら呟いた。憐憫な視線を向けているが、彼はアーチャーの勝利に光り輝くゴールドを賭けている。









    「案外、美と醜は対極にあるようで近くにあるのかもな。」









     スケルトンは骨をカタカタと鳴らした。酒も飲めなければ、表情すら作れないスケルトンだが、美醜感覚は生前のものを持ち合わせている。

















    「何をしているんだ、お前ら。」

















     お互い傷を付けあったバーバリアンとアーチャーの喧騒を聞きつけ、治安維持を買って出ているジャイアントの群れが歩いてきた。リーダー格のジャイアントは黒い毛皮を纏い、大振りの斧を肩に下げている。彼女のバルキリーお手製の装備だと言うことは村中の兵士が知っているだろう。

     ジャイアントが仲裁に入ろうとした時、横から制止の手が伸びた。

















    「互いに譲れないものはな、腕っ節で決めるしかないのさ。」

















     自慢の髭を撫でながらウィザードは告げる。バーバリアンも、アーチャーも既に満身創痍だ。既に立っていることもきびしいだろう。それでも互いのプライドは膝を、腰を曲げることを許さない。双方の目に光る何かを見てしまったジャイアントは衝動的に歩みを止めてしまった。

















    「そうかもしれんな。」

















     そう言うジャイアント達の手には、いつの間にか酒瓶が握られていた。空に煌く月は傾き始めている。

















    「馴れ合いしてる奴らめ、下克上だ!」

















     既に宴会となっているこの場に、聞きなれない声が響いた。戦士たちは敵襲を疑い周りを見渡すが、敵影は見当たらない。

















    「どこ見てるんだよ! 上だ!」

















     ジャイアントは慌てて上空を見上げた。闇のカーテンに広がる砂粒の間から敵の姿がちらりと見えた。

















    「くっ、ベビードラゴンか! やりやがったな!」

















     夜空には幾多の緑星が光っている。一等星よりも大きな緑星はベビードラゴンの巨体だ。幼体とは言え、親の巨躯を引き継いでいることは遠目で見ても分かる。そして、その影からは緑星と同じ数だけの石が流れていた。その小隕石は対象を選ばず全てのものを破壊している。石を投げているのはボウラーだ。ベビードラゴンの背中から石を次々と投擲していた。親が寝た後のベビードラゴンは動きが滑らかだ。これでは地上の面々で対処することは難しい。

















    「各自、回避優先で命を守るんだ!」

















     斧を掲げて石を叩き落とすジャイアントだが、その表情は暗い。既に草原を転がっている石が着実に足場を減らしている。腰ほどの高さを持つ石を必死に蹴るも、僅かに傾いただけだ。このままでは命を落としてしまう。ジャイアントの直感は間違っていなかった。

















     太陽が西から顔を覗かせ、辺りの闇は取り除かれ始めた。ジャイアントは背中で浴びている陽を感じて、自分の行動に改めて得心した。

















    「おかえりなさい、チーフ。」

















     村娘の透き通った声と共に、兵士たちは各自の持ち場に戻る。そこには争いの跡も、巨石の群れも存在していなかった。壁の上で寝ていたヒーラーだけが、慌てて兵舎へと駆け戻っている。

















     いつも通りの夜だった。











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      コメント
      おいは、ひろし。たかし、すごい
      • ひろし
      • 2016/07/04 1:27 PM
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